東京地方裁判所 平成2年(特わ)238号 判決 1990年6月26日
本籍
東京都目黒区柿の木坂二丁目九番
住居
同世田谷区祖師谷四丁目一五番八号
会社役員
田中稔
昭和二四年七月二二日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官渡辺咲子出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年六月及び罰金六〇〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、東京都世田谷区千歳台六丁目一四番二号(但し、昭和六二年七月から同区祖師谷四丁目一五番八号)に居住し、株式会社初穂に勤務するかたわら、同社社員として取り扱つた不動産取引に関与した取引先から謝礼金等を得ていたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、右取引先をしてその謝礼金の支払を第三者に対する仲介手数料等とする仮装の経理処理を行わせ、その取引先から自己に対する支払を隠蔽するなどの方法により、雑所得を秘匿した上
第一 昭和五九年分の実際総所得金額が九七八九万円あつた(別紙1修正損益計算書及び脱税額計算書の総所得金額欄参照)のにかかわらず、右所得税の納期限である昭和六〇年三月一五日までに東京都世田谷区松原六丁目一三番一〇号の所轄北沢税務署長に対し、所得税確定申告書を提出しないで右期限を徒過させ、もつて不正の行為により、昭和五九年分の正規の所得税額五三八〇万三六〇〇円(別紙1脱税額計算書参照)を免れ
第二 昭和六〇年分の実際総所得金額が二億二二〇七万〇二五〇円あつた(別紙2修正損益計算書及び脱税額計算書の総所得金額欄参照)のにかかわらず、右所得税の納期限である昭和六一年三月一五日までに前記北沢税務署長に対し、所得税確定申告書を提出しないで右期限を徒過させ、もつて不正の行為により、昭和六〇年分の正規の所得税額一億三九九六万二九〇〇円(別紙2脱税額計算書参照)を免れ
第三 昭和六一年分の実際総所得金額が一億〇〇五七万三〇五五円あつた(別紙3修正損益計算書及び脱税額計算書の総所得金額参照)のにかかわらず、昭和六二年三月一六日、前記北沢税務署において、同税務署長に対し、昭和六一年分の総所得金額が四二五七万三〇五五円であり、これに対する所得税額が一六四七万七六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(平成元年押第二四三号の1)を提出し、もつて不正の行為により、昭和六〇年分の正規の所得税額五四五九万九二〇〇円と右申告税額との差額三八一二万一六〇〇円(別紙3脱税額計算書参照)を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示全事実につき
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する平成二年二月五日付、同月一四日付(一二丁のもの)、同月二三日付、同月二五日付の各供述調書
一 片桐忠夫の検察官に対する供述調書謄本
一 収税官吏作成の謝礼金収入、上納金、所得控除の各調査書
一 税務署長作成の証拠品提出書
判示第一、第二の各事実につき
一 収税官吏作成の給与収入、給与所得控除額、源泉徴収税額の各調査書
判示第一の事実につき
一 被告人の検察官に対する平成二年二月一四日付(二〇丁のもの)、同月一五日付、同月一六日付(三通)の各供述調書
判示第二、第三の各事実につき
一 被告人の検察官に対する平成二年二月二一日付(全二三丁のもの)、同月二二日付の各供述調書
判示第二の事実につき
一 被告人の検察官に対する平成二年二月一九日付(三通)、同月二〇日付(二通)の各供述調書
判示第三の事実につき
一 被告人の検察官に対する平成二年二月二一日付(七丁のものと全二四丁のもの)の各供述調書
一 押収してある昭和六一年分の所得税確定申告書一袋(平成二年押第二四三号の1)、同収支内訳書一袋(同号の2)、財産及び債務の明細書一袋(同号の3)
(法令の適用)
判示所為 各所得税法二三八条一項、二項
刑種の選択 懲役刑及び罰金刑の各併科
併合罪加重 刑法四五条前段、懲役刑につき同法四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第二の懲役刑に加重)、罰金刑につき同法四八条二項
換刑処分 刑法一八条
執行猶予 刑法二五条一項(懲役刑につき)
(求刑 懲役一年六月及び罰金七〇〇〇万円)
よつて、主文のとおり判決する。
(裁判官 柴田秀樹)
別紙1
修正損益計算書
田中稔
自 昭和59年1月1日
至 昭和59年12月31日
<省略>
脱税額計算書
<省略>
別紙2
修正損益計算書
田中稔
自 昭和60年1月1日
至 昭和60年12月31日
<省略>
脱税額計算書
<省略>
別紙3
修正損益計算書
田中稔
自 昭和61年1月1日
至 昭和61年12月31日
<省略>
脱税額計算書
<省略>